ホームページの情報品質が低下?「生成AI」活用を考える

ホームページの情報品質が低下?「生成AI」活用を考える

1.ホームページでは「コラム・ブログ」SNS・メール・WEB広告への活用も
改めて言うまでもないが、コンテンツ制作における生成AI活用の最大のメリットは、「短時間で大量のコンテンツを生成できる」という点。従来、コンテンツ作成には多くの時間と労力に加え、執筆する担当者の文章力や住宅に関する知識が要求されていたが、生成AIによってこれらの負担を大幅に軽減し、迅速なコンテンツ制作が可能となりました。

WEBコンテンツにおいて生成AIが最も活用されているのはコラム・ブログでしょう。スタッフ近況報告のような親近感を生むためのコンテンツには不向きですが、住宅に関する知識・情報を発信するコンテンツを作成・発信する会社にとって、生成AIは強力な武器です。「変動金利のメリットとデメリット」「在来工法と2×4工法の違い」「土地探しの3つのポイント」など、お客様が興味を持つ可能性が高く、かつ一定以上の知識が求められるテーマの記事を、これまでよりも効率的に作成することができる。SEO(検索エンジン最適化)・コンテンツマーケティングに注力している会社であれば、生成AIによる記事作成が当たり前になっているところも多いでしょう。

コラムに似たコンテンツとして「FAQ(よくある質問)」の作成に生成AIを活用する会社も多いです。「家づくりは何から始めれば良いですか?」「モデルハウス見学を事前予約するメリットは何ですか?」といった質問と回答を生成AIで作成しホームページへ蓄積することで、SEO効果を狙えるほか、ホームページを訪問したお客様に対して「情報が豊富なホームページ」というプラスイメージを与えることも可能です。

このほか、モデルハウス紹介・イベント案内・施工事例・お客様の声といったコンテンツも、ゼロからの生成は難しいものの、文章の校正や情報の補強において生成AIが役立つ立場は多い。また、ホームページ以外であれば、SNS投稿用のテキスト・お客様に対するメール文面・メールマガジン・WEB広告のテキストなどの作成に活用している会社が多いようです。

2.生成AIの利用目的は「楽をすること」?誤った利用で目立つ情報の質低下
一方で、生成AIの普及とともに、住宅会社のホームページにおいて散見されるようになったのが「コンテンツの質の低下」。以下に、よく目にすることの多い事例を3つ挙げますが、いづれも生成AIが作成したコンテンツを十分に検証しないで、そのまま利用していることが要因であることは明白です。

●誤った情報・古い情報をそのまま掲載
「耐震等級は1~4の4段階」という明らかに誤った情報や、今年公開した記事にも拘わらず「住宅ローン控除は年末残高の1%」という古い情報がホームページに掲載されている住宅会社がある。自社名を冠したコンテンツでこのような記事を発信していたら、会社の信頼に関わってしまいます。また、質の低い記事の乱発はSEOにおいて不利に働くリスクもあります。「生成された記事は必ず内容を検証する」という当たり前のことを徹底しましょう。WEB担当の人員が少なく、掲載内容のチェックをする習慣が無い会社は特に要注意です。

●文体・言葉遣いの極端な変化
あるビルダーのホームページでは、同じスタッフ名で掲載されているブログであるにも関わらず、ある時期を境に文体や言葉遣いが極端に変わってしまっている。おそらく、生成AIの利用による変化だと思われます。別の住宅メーカーでは、お客様向けのメール作成において、1通目を担当者自身が書き、2通目を生成AIに書かせた結果、1通目と2通目で同じ差出人であるにも関わらず別人のような文章になってしまっていました。生成AIで文章を作成する場合も、読み手であるお客様に違和感を与えないため、人間側での文章の校正は必須です。加えて、生成AI側の学習も必要でしょう。

●自社の特長に言及せず、一般的な説明に終始
住宅会社が発信するコラム・ブログは、ただ一般的な住宅の知識を説明するだけでなく、自社の実例を交えた解説による実績のアピールや、モデルハウス来場予約やカタログ請求につなげるための文脈が求められます。にもかかわらず、一般的な説明に終始し、自社に関連した説明が皆無のコンテンツが非常に多いです。生成AI登場以前から少なくなかったのですが、生成AIの登場後にコンテンツを量産している会社で、特にこのようなコンテンツを見受けます。

生成AI側に自社情報を学習させることで解決することも不可能ではないのですが、まずは人間の手で、自社の発信意図に合わせた記事のリライトが必要です。

以上の3パターンに共通する問題点は、生成AIの利用目的が「時短すること」「楽をすること」に留まっている点ではないでしょうか。WEB集客の現場において、生成AIを活用する本来の目的は「自社の集客を伸ばす」ことです。担当者が目的を理解したうえで「自社をどのようにアピールしたいのか」を考えて、AIが生成した情報を補完するプロセスは、決して欠かしてはなりません。正しい目的意識の上に立脚すれば、生成AIはWEB集客の伸長に欠かせないサポートツールとなることでしょう。

                                                       
                           ※株式会社住宅産業研究所「TACT」参照