WEB施策、"刈り取り"に偏っていませんか?~「認知獲得施策」を考える

WEB施策、"刈り取り"に偏っていませんか?~「認知獲得施策」を考える

WEBを活用した集客施策と言うと、来場予約やカタログ請求の予約など、いわゆる刈り取りの施策がメインになることが多い。今回は、その前段階となる種蒔きの施策、「認知獲得」について考えてみます。

●WEB広告へのシフトで認知施策が減少か中長期的に自社のブランドを損ねるリスクも
今回取り上げる認知獲得施策は、住宅購入検討前の潜在的なお客様に対して自社の存在を認知いただくことが主目的となります。WEB以外のメディアでは、テレビやラジオのCM・屋外看板・交通広告・地域イベントなどが有効な媒体と言えます。改めての説明ではありますが、認知施策の最大メリットは、潜在層が家づくりの検討をスタートした際に自社を想起する可能性が高まる点です。

お客様側の「以前から知っている会社」という認識を生むことが、自社の集客活動に大きなアドバンテージとなり得ます。認知獲得は大半の施策が広告であるが、近年はビルダーの広告費もWEBにシフトしており、従来型の広告は縮小傾向です。テレビなどの媒体が若年層にアプローチしづらくなったと言われていることに加え、刈り取りを得意とするWEB広告(検索エンジン広告・ディスプレイ広告)に比べて見劣りすることも原因でしょう。

ここで落とし穴となるのが、刈り取り型のWEB広告に広告宣伝費を傾けた結果、認知獲得施策が疎かになるという点です。地域トップクラスのビルダーがテレビCMの予算をWEB広告に移行するケースが目立つが、業界内で知名度の高い地域1番点であっても潜在層のお客様には社名すら認知されないケースは意外と多いため、「まず知っていただく」ための施策を怠ることは中長期的に自社ブランドを損ねるリスクをはらんでいます。

刈り取りを目的としたWEB広告が今後もビルダーの広告宣伝施策のメインとなることは間違いないのだろうが、種蒔きのための施策にも改めて目を向ける必要があります。

●WEB広告での認知獲得施策 有効なのは動画広告・ディスプレイ広告
とは言え、認知獲得を得意とする媒体が、一次取得層のメインである20~30代に届きにくくなっていることも事実です。そこで検討したいのが、WEB上での認知獲得施策です。まず多くの方が思い浮かべるのはInstagram・Youtubeなどの自社アカウントの活用でしょう。ホームページのSEO対策やオウンドメディアも、自社を知らないお客様と接点を生む有効な施策です。ただしこれらの施策はあくまでも「住宅に関する情報を能動的に探している方」つまり、検討中のお客様が主な対象となるため、今回取り上げている潜在層へのアプローチとしてはやや弱いです。

潜在層へのアプローチとなると、現状ではWEB広告が最も有効でしょう。刈り取り型が主流である一方、認知獲得を得意とする広告メニューも増えてきた。WEB広告費の100%を刈り取りに投じているビルダーは、一部を認知目的に充てることを検討したい。

テレビCMに近い効果が期待できるのはYouTube広告。配信ターゲットを刈り取り型のような「〇〇県内で家づくりに関心がある方」ではなく「〇〇県内にお住まいの方」と広く設定すれば、テレビCMと似た形での自社PRを実施できます。配信方法やエリアによって差はあるものの、数万円の費用で10万回以上の再生回数を実現することも可能です。すでにテレビCMを実施しているビルダーはもちろん、これまでテレビCMに手を出しづらかった中小ビルダーや都市圏のエリア限定型ビルダーにとっても有効な選択肢です。

ディスプレイ広告も比較的有効です。刈り取り型で活用されることが多いのですが、YouTube広告と同様に配信ターゲットを調整することで、地域のお客様に広く自社をPRすることが可能です。近年はお客様のスマートフォン画面を独占できるInstagramストーリーズ広告のように、訴求力の高い広告枠も増えています。配信単価は一般的にYoutube広告よりも安価であり、Yahooトップページ最上部のような人気の広告枠も以前に比べ単価が下がってきた。バナー広告であれば動画に比べクリエイティブ制作のハードルが低いため、テレビCMや認知獲得広告の実績が無いビルダーが取り組みやすい施策と言えます。

●効果測定は決して困難ではない 「サーチリフト」であれば無料で実施可能
認知獲得広告が敬遠される理由の一つに「費用対効果が不明瞭」「効果測定にコストがかかる」点が挙げられます。確かに刈り取り型の広告に比べて費用対効果が曖昧になりやすい点は否めないが、多額の費用を投じなければ効果測定ができないかと言われれば、決してそうではない。

例えば、無料で実施できる効果測定で用いられることが多いのは「サーチリフト」と呼ばれる手法。認知獲得施策の前後で社名・ブランド名による検索数(≒自社名で検索するお客様の数)の増加率を調べる方法です。また有料での効果測定も、簡易的なWEBアンケートで認知度を測るのであれば、数万円で実現できる調査サービスが複数存在する。いずれの方法も、認知獲得施策の効果を確かめる一助となるでしょう。

これからの施策は(短期間で多額の予算を投じる場合を除き)すぐに効果が表れるものではない。そのため少なくとも6ヶ月間、できれば1年間は継続した上で、効果測定を実施することをおすすめします。

                         ※株式会社住宅産業研究所「TACT」参照